第二回 『二代目』
平成十八年六月下旬ある名古屋の商社の株主総会召集を受けて、前日東京からの帰りに立ち寄ることにしました。商社といっても年商数十億のこじんまりした会社で、集まった株主は約二十名と壇上に十名ほどで総勢三十名足らずの株主総会が始まったわけです。議長は常務の三十台半ばで、今風に言えばイケ面で昔風に言えばヤサオトコです。総会終了後議長と歓談したのですが、性格もおっとりしたもので事業の成長に一抹の不安を覚えたものでした。
翌年の株主総会にも出席したのですが、其のときは常務でなく代表取締役となっていました。創業者の社長は昨年亡くなられたとのことで、引継ぎの苦労話も聞きましたが、私には二代目社長の顔からは苦労を感じることが出来ませんでした。
私自身事業を起こして四十年を迎えようとしていて、私の周りの経営者は引継ぎのラッシュです。中には三代目・四代目の引継ぎもいて、老舗と言われるのにふさわしい歴史を重ねた方もおられます。
創業者、二代目、三代目と事業は引き継がれていくのですが、二代目で挫折した会社も数社とお付き合いいたしました。
ところで、いろいろな会社とお付き合いをさせていただき、二代目にいくつかの共通項があることに気付いたのです。
二代目の類似点
一・初代よりイケメンである。
二・初代より性格が穏やかである。
三・初代より事業闘争本能に欠ける。
四・博打をきらう。
貴方の周りの二代目社長を思い浮かべてください、当てはまる二代目又は三代目社長が居られるのではないでしょうか。
なぜ二代目はイケメンで穏やかなのか。
子供の頃から食欲は満たされ、栄養豊富に育てられて玩具や衣服も欲しいがままにあてがわられて育てられる。私が子供の頃と違って、悪知恵を働かせることもなく、兄弟で食べ物を奪い合うこともなく、又兄のお下がりを使うこともなく成長する。毎日同じ食事をしていると、他人である夫婦でさえ顔つきが似てくるといわれます。顔つきが似るぐらいだから食事によって性格が厳しくもなり、穏やかにもなるでしょう。
事業闘争本能にかけるのはなぜか。
初代社長は自らの意思で独立の道を選び、現在の地位を築いて、より一層の成長を常に思い抱いているが、二台目は成長より縮小や破綻を恐れ、現状維持の中での成長を狙うため、石橋を叩いて渡る結果と成り、闘争を避ける結果となるのではないか。
以上のことから察すれば博打を嫌うのは当然で、二代目好青年社長の誕生となるのではないでしょうか。二代目で破綻した社長を思い出すと、博打にのめりこむか、異性に惑い、長年こつこつと初代が築いた資産を短期間で使い果たしてしまうか、初代を飛び越えようとして急激な事業拡大を図り資金繰りが伴わず破綻の憂き目を見る。
二代目社長に必要なのは、よき共同事業者に恵まれることではないでしょうか。よき共同事業者とは、苦言を弄し事業の方向を強く提言する部下のことです。初代社長の苦言や提案は、二代目を萎縮させるだけにすぎないだけで役には立たないようです。
部下には当然妻も含まれますが、よき部下にめぐり合えるかあえないかによって、会社の将来が左右されそうです。当然のことながら、よき部下を育てるのは社長の仕事で、部下を育てる力があれば会社の成長はとどまることがないように思われます。私に部下を育てる力が『も少しあったなら』と悔やまれますが、後は無言で二代目に託すのみです。
平成20年7月 田辺父朗 |